ペイフォワード「ペイフォワード」2006/7/17 「いま間に合ってますんで」 その人はそう言った。 「直接返してくれなくていいです」 はあ? はじめ、その人が何を言いたいのかわからなかった。 「他の困っている人を助けてあげてください。 そのうち自分のとこに回って来ますから」 そう言って笑った。 私は約束した。 必ず果たすとその人に誓った。 私は約束を果たした。 ひとつではいつになったらその人に届くかわからないので、 自分に余裕のあるときは積極的に「いいこと」をやることにした。 別に頼まれなくたって、お礼を言われなくたって関係ない。 いつかあの人のもとへ返りますように。 それから8年後、映画「ペイフォワード」を観た。 そうか、こういうことか。 目からウロコが落ちた。 その人は私に財布を届けてくれた。 友人とふたりでコンサートに行こうと、ある地下鉄の駅の改札を出ようとした。 電車の中に置き忘れていたのだ。ふたり分のチケットも入っていた財布を。 その人はわざわざ電車を降りて、結構な階段を登り、私達に追いついた。 財布を手渡されて初めてバッグに入ってなかったのだと気付いた。 「じゃ」 お礼を口にする間もなくさっさと立ち去ろうとした。 給料日直後で財布にはそれなり以上の金額が入っていた。 感激した私がお礼をしたいと言うと、あっさり断られた。 私はどうしてもお礼がしたかった。 その人はちょっと考えて、そしてあの約束になったのだ。 もう届いたかなあ。 いまでもたまにそう考える。 そんなわけで、できるだけ「いいこと」をやることにしている。 いつか困ってる誰かのために。 ジャンル別一覧
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